60Hz地域から50Hz地域へ引っ越すことになり、現在使用中のエアーコンプレッサーが正常に稼働するのか否かついて知りたい方へ

エアーコンプレッサーは周波数が変わることにより、どのような変化が起こるのか。また、対策などあれば知りたい。出来れば安価に、そして“安全”にエアーコンプレッサーの移設を行いたいと考えていませんか?

本記事では、下記の内容を解説します。(2021年7月12日更新)

私はコンプレッサーの修理屋です。福岡県を拠点に日々修理やメンテナンス、オーバーホールをしています。

どうして日本国内に60Hzと50Hz地域が存在するの?

日本の電源周波数は、富士川(静岡県)と糸魚川(新潟県)を境に東側は50Hz=ヘルツ、西側が60Hz=ヘルツとなっていて、世界でも珍しい国だそうです。

明治時代に入り、日本で電気が使われるようになりましたが、当時の日本では、電気をつくるための発電機を、外国から輸入しなければいけませんでした。東京には「ドイツ製」の発電機(50Hz=ヘルツ)が、大阪には「アメリカ製」の発電機(60Hz=ヘルツ)がそれぞれ輸入されました。その後、東西の周波数は、そのまま全国に広がりました。

そもそも60Hzと50Hz地域で何が違うの?

異なる周波数「50Hz」の電気と「60Hz」の電気。基本的には、どちらも“電気”です。

周波数は、1秒間に流れる電気が変化する回数のこと。電気は、波のように大きくなったり小さくなったりを繰り返します。その1秒間における波の数(大小でワンセット)が電源周波数です。周波数は「Hz(ヘルツ)」という単位で表されます。

周波数は、この1秒間に入れ替わる回数のことで、50Hzは1秒間に50回、60Hzは1秒間に60回変化することを表しています。

そして、エアーコンプレッサーは周波数を基準にして作られている部品があります。

思い浮かぶ部品としては、

・メーンモーター
・ファンモーター
・シロッコファンのサイズ
・ダクトサイズ

などです。

メインモーター
ファンモーター

ここで注目するべきは、50Hzもしくは60Hzを基準として作られているエアーコンプレッサーを異なる周波数の地域で使用した場合、モーターの回転数が変わり、性能が低下したり、過剰に働いて火災の原因となったりすることです。また、消耗部品の劣化が早くなったり、コンプレッサー内部の換気効率が落ち、異常停止に繋がる可能性もあります。

もともと周波数に関係なく使用できる、「インバーター」搭載機は、モーターの周波数を適切に変えて回転数を調整するため、問題なく使用可能です。

【質問】60Hz地域から50Hz地域へ工場を移転することになりました。エアーコンプレッサーの対策を知りたいです。

質問:仕事の都合で、60ヘルツ地区から50ヘルツ地区に行くことになりました。
それに伴い、コンプレッサーを移動させるのですが、60ヘルツから50ヘルツになると約2割程コンプレッサーの能力が落ちるとの事をお聞きしまして、買い替え出来るほど余裕もなく、どうにかならないものかと思いメールした次第です。※分解、組立は出来ます。

このような内容のご質問を数か月前に頂戴いたしました。

ご使用のエアーコンプレッサーは、東芝トスコンと日立ベビコンで、空気タンクの上に圧縮機とモーターが搭載されている“レシプロ式エアーコンプレッサー”2台でした。

質問の中でも、『約2割程コンプレッサーの能力が落ちる』とあります。

単純計算ですが、60Hzの製品を50Hzへ移動する場合、モーターの回転数が約17%ダウンします。モーターの回転数が落ちれば、圧縮機本体の回転数も落ちるため、吐出空気量も少なくなります。

反対に50Hzのエアーコンプレッサーを60Hz地帯へ移動させて使用した場合、圧縮機本体も50Hz地域で設置する場合よりも、よく多く回転するため吐出空気量は増加します。

50Hzのエアーコンプレッサーを、60Hz地域へ移動する場合は、問題なさそう或いは、メリットがあるように聞こえるかもしれませんが、メーカーの設計以上に圧縮機本体が回転すれば、劣化の速度が早くなったり、場合によっては火災の原因に繋がる可能性もあります。電磁接触器(マグネットスイッチ)や電磁弁、圧力スイッチはの消耗は著しく早くなります。

しかし現在のエアーコンプレッサーのモーターは、50Hz60Hz共用の製品を使用していますので、レシプロコンプレッサーの場合、モーター側のプーリーを変更いただければ、ご使用いただくことは可能です。ちなみに圧縮機本体側のプーリーは50Hz60Hz共用のものが多いように感じます。

今回の質問者様の場合は、モーター側のプーリー交換とベルトの交換で対応可能です。

実際に交換をされる場合は、誤った取付け方をしてしまうと、大事故に繋がり兼ねませんので、プロの修理屋さんへ相談されると良いかと思います。

スクリューコンプレッサーの移設の場合はどうすればいいの?

先ほど記載したように、シロッコファンや内部のダクトの大きさ等が変わる為、異常停止に繋がる可能性が高いです。実際に問題なく使用している会社様もお見受けいたしますが、コンプレッサ修理屋の立場としては、“安全第一”です。

改造希望された場合でも、決して安価ではないと考えますので、エアーコンプレッサーの入替えを検討されることをお勧めいたします。

【追記】固定機、22kWと37kWの機種でヘルツフリー機が発売されました。

HISCREW Gシリーズ [22/37kW Class]は、ヘルツフリー機種のため、西日本地区、東日本地区関係なくご使用いただけます。
【参考ページ】日立産機システム社:https://www.hitachi-ies.co.jp/products/cmp/screw_oil/g/index.html

日立産機システム社製 Ftype



弊社では突発の修理から日頃のメンテナンスは勿論、新台エアーコンプレッサーの販売も行っています。小さな疑問やお悩みでも耳を傾けて参りますので、お気軽にご連絡ください。この度のブログを読んでいただき、誠にありがとうございました。

文責:有限会社大西エアーサービス 大西健

大西健

コンプレッサ修理屋/大西エアーサービス

この記事を書いた人

大西エアーサービスのウェブサイト制作・運用担当。2007年よりコンプレッサ修理屋として働いています。以前の職種は洋服のパタンナーアシスタント。世界中の美術館を巡ることが趣味のひとつです。お客様の想いに耳を傾けながら、生産現場が止まらないように、コンプレッサー運用のお手伝いをしています。“迅速”かつ“丁寧”がモットーです。
コンプレッサ修理屋「大西健」の挨拶文はこちら→https://www.onishi-air.jp/office/

Profile Picture

コンプレッサーの修理・相談窓口


TEL 092-410-4622

受付時間/平日 AM8:30~PM17:00
     土曜 AM8:30~PM15:00


FAX 092-410-4623

メールでお問合せ

(日曜・祝祭日は休業) 深夜・早朝の場合は、メール又はFAXをください。

Follow me!